院長ブログ

美容外科学会の“美”とは?

久し振りの学会参加。

コロナ禍で浦島花子になりかけていた私には、適度に刺激となりました。

学会参加者数は過去最大とのことで、超三蜜会場の人混みに、美容医療への関心の高さを感じずにはいられません

20~30代の若いドクターが増え、美容医療は人気の職業になったのでしょうか。

患者さんの美容医療に対する心理的ハードルは格段と下がったようで、市場規模としてこの1年で10%拡大していると聞きました。コロナによる不況なんてどこ吹く風?です。

大手美容外科や有名な医師が、SNSなどで治療を拡散している影響なのでしょうか。

 

日本美容外科学会ですが、日本には同じ名前の学会が2つあります。

①開業医が中心となって活動してる学会

②大学の形成外科医が中心となって活動してる学会

今回は①の学会でした。

①の学会は商売色がムンムン感じられるムードですが、コロナ前に比べるといささか大人しくなった印象です。

以前はド派手な懇親会会場に、モデルのようなイケメンがホストのようにお酒を配ったり、高級スポーツカーが展示されていたりと、美容外科医からお金を吸い上げようとしているのか?と疑いたくなるような雰囲気でした。

参加者はドクターだけではないと思うのですが、水商売と見間違えるようなけばけばしい人たちがウロウロしていたことを思い出します。

それに比べれば、随分と地味になったように感じたのは、外見を派手に見せるような見栄っ張り行為に若い人達が共感しなくなっているせいかなぁ、などと考えてみたり。

そして、学会中の質疑応答が極端に少なくなったことも気になりました。

元気がないんですよね。

他の医師たちがどんな治療をしているのか、どういう工夫をしているのか。

そういう情報交換の場であって欲しいのに、本当に「しら~」っと静まり返っているのです。

医師がこんな様子で、本当にこの業界は盛り上がっているのかいと、少し心配になりました。

一部のやる気ある医師たちが牽引しているのは間違いないと思いますが、業界全体としてのエネルギー量が低下しているように感じました。

 

そんな中でも素晴らしい技術を持っていらっしゃる先生のライブサージェリーや、

治療の工夫、新たな気付きなどを発表されている先生方のお話に触れ、

私の浦島脳も少しは刺激を受け、思考の整理が出来たように思います。

 

1990年代後半、虜になった美容外科。

あれほどまでに恋焦がれ、やっとの思いで足を踏み入れることができたこの世界。

20年以上臨床の場で診療を続けることで、いろいろ気づき、いろいろ考え、自分の理想とする美容医療の在り方も紆余曲折でした。

ゴールデンプロポーションに近づけるよう顔の形や輪郭を整えるために、ヒアルロン酸注入をしたり、小顔ボトックスしたり、フェイスリフト手術をしたり、鼻を高くしたり、小鼻を縮小したり、目を二重にしてみたり、鼻と口の距離を短くするために人中短縮してみたり、美容医療の度は果てしなく続きます。学会ではそれらの技法について発表し、学びます。

肌の質感を高め、ハリを出すために、HIFUやピコレーザー、ダーマペンといった『機器』がもてはやされ、「どの機器が良いのですか?」という質問が飛び交います。

ずば抜けて効果的な機器などなく、施術者がどのように治療するかによって効果は変わります。

「美しくなりたい」と一言でまとめても、美の基準がまちまちですし、望む美のレベルも千差万別です。

小さなシミ1つ消し去りたいという美肌オタクの人もいれば、「そんなにキレイにならなくてもいいんです」という謙虚な方もいらっしゃいます。

私たち医療従事者は、自分の感性を押し付けることなく、1人ひとりのニーズを察知し、過不足なく提供してこそ、求められるクリニックでいられるのだと考えています。

 

気になるシミがとれて、明るい肌色になった!

ちょっとハリが出て、お肌がモチモチになった!

というような軽微な変化でも、人の気持ちはグンと前向きに明るくなるものです。

私は、そんな美容医療を心地よく感じています。

 

美容皮膚科で叶える効果はほどんど無いに等しいと言い切る美容外科の先生もいます。

そのように考えるドクターは、派手な変化を好みますから、「私、整形しました」のような変化を出す治療をします。

造作を変えてしまうような美容外科に違和感があり、それは私が求める『美』とは違うと自覚し始めたのはいつの頃でしょうか。

私も20代の頃は鼻を整形したいとか、年を取ったらフェイスリフトやらなくっちゃ!なんて真剣に考えたものですが

50代になって、人生の酸いも甘いも嚙み分けるようになった今は、手術までしなくてもいいか、と思えるようになりました。

そう、こうやって人は変わります。

女優の黒木瞳さんが、ご自身の出演した映画の中で、

「若い子には負ければいい」というセリフがお気に入りだとか。

映画の原作者内館牧子さんが書いたセリフ。

「時代は動くから、いつまでも同じところにはたっていられない、若い人には負ければいい、それが人としての品性なんだという。だから年齢を重ねれば重ねるほど、若作りしてもおかしいだけで、受け入れればいい。」

同感。

 

最近は30歳前後から肌の老化を気にする人が増えたように思います。

若い時の勢いで、不可逆的な変化をもたらす美容医療を刹那的に受けることは断固反対

時には止める医師も必要だと思い、もっと本質的なことに目を向け努力できる人間性を養って欲しいと願います。

造作美だけではなく、それを得た先に何があるのか?を考える時代になってきました。

当院では、人生を豊かにする優しい美容医療を提供したいと思います。