院長ブログ

家について考える

皆さんのご自宅は持ち家ですか?賃貸ですか?

私は賃貸マンションに10年以上住んでいます。

私にとっては最高のお家で、大変気に入っております。

14年前にクリニックを開業した頃、夫の職場近くに引っ越すことになりました。

まだ下の子が2歳で、2人とも保育園に通っていたころです。

私の白金のクリニックにも近いところでしたし、開業準備で大忙しでしたから、引っ越しはすべて夫に任せて、私は身一つで1か月くらい遅れて新居に向かいました

たとえ1か月でも、母親不在は不安だったらしく、5歳の娘が手紙を書いてくれたことを忘れません。

「お母さん、いつ引っ越してくるの?」と

夫の両親がちょうど定年退職したこともあり、同じマンションの別室に住んでもらいました。

子供の保育園送迎や食事などはすべて義父母に任せっきりの3年間を過ごしました。本当に有難いことでした。

 

3年経った頃、今度は夫が離れた地で開業することになりました。

子供も小さいし、家族が離れ離れになることに対してさんざん反対したのですが、まだ30代だった夫は自分のやりたいことを実現させるために、遠いところへ引っ越していきました。

父親というのは薄情なものだと痛感し、恨みもしましたが、人のやりたい気持ちを押さえつけてはいけないという相反する思いも抱きました。私も散々好きなことをやってきた人間でしたから。

クリニックと子供2人抱えて、夫不在の8割シングルマザー生活は厳しく、実母の助けを借りてやりくりすることになりました。

 

3年間住んでいたマンションは、やや手狭に感じてきたので、もう少し広いところに引っ越そうと探し始めたところ、近くのマンションに最適な賃貸物件を発見 私たち家族の3LDKと、母が住む1LDKの2部屋を借りることができました。このマンションに住み続けて10年以上経ちました。私のお気に入りポイントを挙げてみます。

・立地が良く、駅から近い。

・間取りが良く暮らしやすい。

・床暖房があるので、冬もポカポカ。

・ゴミステーションが各フロアにあるので、まめにゴミ捨てができる。

・駐車場の出し入れが簡単。

・トランクルームがある。

・大家さんとの関係良好。

このマンションに住み始めた時、私はまだ30代。クリニックを始めて4年目、都心にマンションを購入できるほど余裕はありません。多くの若い夫婦は、年収の5倍?くらい借金してマイホームを購入していますが、クリニック経営のことで頭がいっぱいで、自宅に大金を費やすという発想がありませんでした。

数年経過して40代になった頃、子供たちも大きくなってきたし、そろそろ母親の助けを借りるのは卒業しなければという思いに駆られ、母は自宅に戻ってもらいました。その代わりに通いのお手伝いさんを雇いました。この時、私はようやく1人前になれたと自覚した記憶があります。

私のクリニックも、夫のクリニックも真面目に働き続け、軌道に乗ってきたので、そろそろ自宅を購入しようかしらと5年ほど前から不動産屋に物件を紹介し続けてもらっているのですが、なかなか今のマンションを超える物件に出会うことができません。引っ越したいな、と思えるお家が見つからないのです。

いざ購入できるようになると、買いたいお家が見つからないのですよ。すごく矛盾を感じます。

なんでだろう・・・

ようやく答えがみつかりました。

長年暮らしてきた家族との思い出が染み付いているのです。この思い出こそが最大の価値であり、それを凌駕するような家と巡り合うことはかなり確率が低いように思えます。この家で10年以上、子育てもクリニックも頑張ってきました。家も、子供も、私も、皆で成長してきた愛の住処です。かわいい犬も飼っています。そんな思い出いっぱいのお家を手放すことができるでしょうか。

マイホームについては、持ち家vs賃貸、都心vs田舎、戸建てvsマンション など対比させどちらがいいか?というような議論をよく目にしますが、これらは全くナンセンスです。

その人その人の生い立ち、ライフスタイル、家族構成、仕事など様々であり、「これがいい!」なんて皆に当てはまる家などあるはずがありません。自分がいいと感じる家がいいのです。

 

家とはハードそのものよりも、ソフトが大切です。

見栄えではなく、家族が仲良く暮らせる空間であることが幸せであり、家の本当の意味だと思います。