ダウンタイム
Netflixの「ダウンタイム」が話題になり、美容医療が熱い。
患者さんによく意見を求められる。
私もシルバーウィーク中に全て観た。
美容医療=美容外科の時代は、美容医療は極一部の限られた人だけのサービスで良いと思っていた。
医療である以上リスクを伴うし、自由診療だからそれなりのコストもかかる。
それだけの勇気と財力がある人だけのサービスだった。
そこに従事する医師たちも、相当な覚悟を持って自己研鑽していたと思う。
私の周りには、職人技を究めた美容外科医が多く、ドラマに出てくるような拝金主義の派手なドクターはあまりいないが、学会などの集まりに参加すると、思わず振り返りたくなるような整形顔にお目にかかることもしばしば。おおっ、、、派手にやりましたね
みたいな![]()
それはそれで、もはや美容整形のアイコンみたいなものだし、ドクター自ら治療を受けることは美容外科医として当然のことだと思う。むしろ、その勇気にあっぱれだ。
美容外科手術は肉体が健康な人に麻酔をしてメスを入れる。
切る以上、出血や腫れ、神経損傷、感染などの合併症はいつもつきまとう。
深夜に緊急処置をすることもある。
いや、手術そのものが深夜に及んでいた。(25年前の話)
シンデレラは0時の鐘と共に魔法が溶け、すっぴん眼鏡で帰宅。
麻酔科医も看護師も、よく付き合って下さっていたものだ。
みんなよく働いた。
私はまだ若く、手術が楽しかったから、喜んで助手をやっていた。
しかし、執刀医になると、全責任は自分にかかるし、いつも深夜対応は出来ないと思った。
子育ての責任と手術の責任を負うことは、私のキャパを超えている。
そこで、美容皮膚科に全振りして開業することになった。
20年前のことである。
コロナ後から美容クリニックはぐんぐん増加し、美容医療に従事する医師も増えている。それに比例するかのように、国民生活センターに寄せられた美容医療サービスに関する相談は、2024年に1万774件と5年前の5.3倍に増えているらしい。
2026年10月11日. 美容医療に流れる医師. 日経新聞
また、隣国へ渡航して美容外科手術を受け、抜糸だけ日本の診療所で受ける人が増えていると聞く。
術後の経過を診ることもなく手術をするのは信じがたい。
クリニック側も問題があるが、手術を受けている患者も慎重になって欲しい。
治療をした医師が最後まで責任を持って診療にあたるべきだ。
美容医療の裾野を広げてしまったことで、トラブルが増えるのは当然のことなので、いろいろな問題点にフォーカスしている点では、このドラマはリスクの啓蒙活動になっているのではないかと思った。
それから、病気を抱えている患者さんに対して美容医療は行うべきか否かが問われる場面もあったが、物事はなんでもグラデーションがかかっており、グレーなのだと思う。白黒つけられるものではない。
何でもかんでもYES, NOの二元論で考えるからおかしなことになる。
物事の連続性、一元論で考えると争いは減るのだと思う。
私の大好きなボトックス治療も、「ボトックスは良くない」と切り捨ててしまう人もいるが、それは極端な二元論だ。
極度に痛みに弱いとか、シワが好きとか、ボトックスを続けられる経済力がないとか、ボトックスを受けたくない理由が明確な人にとっては必要のない治療なのである。
一方、シワが伸びて表情が明るくなるボトックスの効果を気に入って、その顔でいることが人生にとって何よりも大切とお考えの方にとっては、なくてはならない治療となる。
このように、ボトックス治療も良い・悪いと言い切れるものではない。
ただし、医療である以上身体に傷をつける行為をするので、治療のリスクと効果を天秤にかけて判断するようにしたい。
それにしても、いよいよ美容医療がドラマになるなんて、自分の業界に光が当たったようでちょっと嬉しい。
