継ぎ接ぎ美容の問題点
コロナ禍以降、リモートワークが定着したり、オンラインショッピングの利用者が増加したり、店舗数が減少したり、社会全体に様々な変化が見られます。
私も敢えてデパートなど商業施設に買い物に行くことが激減しました。
美容医療業界では、市場規模がぐんと拡大しています。
あるデータによると、美容医療法人の売上は2022年と比較して2024年は1.5倍になっているとか。
若い世代を対象とした治療が増え、美容医療の敷居が下がっているように思います。
当院での変化は「そろそろ定期的にお肌のお手入れをしたいと思っていました。」という理由で来院される方が増えたことです。
昔は、「このシミが取りたい」とか「おでこのシワが気になる」といった具体的な悩み相談が主訴でした。
最近は、「美容クリニックに通う」ことが自体が目的になっているようで、時代の変化を感じます。
そしてもっと気になる変化は、美容クリニックの『使い分け』です。
当院に通って下さる方々に対して、白金式(私なりの美の基準
)で、お一人お一人に合った治療と通院頻度を提案しています。
そして長い年月をかけて、健康的で美しい素肌を作っていきます。
その一環として、お化粧品を減らす指導もさせていただいております。
食生活など生活習慣にも、踏み込んでお聞きしています。
当院では肌診断機器を用いて同じ条件で写真撮影をし、マイクロスコープで皮膚の状態を観察し、メラニン色素や赤みを計測し、何よりも触診して肌状態の変化を診察しています。
私の指先には、25年にわたる診療で得た独自のセンサーがあり、皮膚を触るといろいろなことを感じ取ることができます。
皮膚は生き物ですから、調子が良い時もあれば悪い時もあります。
肌状態が悪い時は、生活習慣の変化など細かく問診させていただき、悪化理由を探るようにしています。
使用している化粧品も確認しています。
医師と患者の信頼関係と、こうした丁寧なやりとりの積み重ねが、美しい素肌づくりには欠かせないと思っています。
長年かけて共に作り上げた患者様のきれいな肌に触れると、心の底から嬉しく思いますし、この仕事を続けていて良かったと実感し、大切な患者様の肌を最後までお世話しなくては!という気持ちになります。
残念ながら、価格を理由に他院で治療を受けたり、隣国で治療を受ける方が増えているように思います。
低価格にはそれなりに理由があり、流れ作業的だったり、きちんと診察してくれないとか、質問に応じていただけないようなこともあるようです。治療のトラブルを診ないなんて、医師としてはあり得ないことです。困った時はきちんと相談できる医師を選んでください。
また、医師それぞれに美意識の違いがあり、治療方針も異なります。
それに良し悪しはなく、あくまでも『差異』です。
自分と波長が合い、信頼できる医師やクリニックを選択し、通い続けることが、美へのゴールデンルートです。
ですから、あちこちで継ぎ接ぎのような治療を受けていると、本質的な美を得ることが出来ないのではないか?と思うのです。
自分のクリニックを選んで下さった大切な患者様の肌を預かる身として、責任を持って治療に当たりたいのです。その大切な肌を、他のドクターも治療しているとなると、治療方針も異なりますし、どの治療がどんな効果をもたらしているのか分からなくなります。治療の一貫性が失われ、治療結果の責任は誰が負うのか?という問題も出てくると思います。
ですから、ドクターショッピングは控えていただきたい
と切に願います。
美容医療のプロとして、患者様に利益をもたらす最適な治療を提供するという行動目標がありますので、「他院で治療を受けてきました」と気軽に申告されると、とても悲しく残念な気持ちになります![]()
当院の患者様で継ぎ接ぎ美容をしている方はそれほど多くありませんが、それでもここ数年でだいぶ増えたと感じています。
ファッション感覚で隣国へ美容医療を受けに行く人のお話を聞くたびに、術後トラブルが発生するリスクを看過していることに危うさと軽さを感じずにはいられません。医療行為とは人体に傷をつけることが許されているのです。だからこそ医師免許が必要なのです。海外の医師でも信頼して通院しているのであればいいのですが、トラブル発生時のみ日本の医師を頼りにする姿勢は疑問に思います。
このような私の考えに賛同して下さる方が当院に通って下さっていますし、我々は美容医療に対して慎重かつ過剰な美を追求しません。だからこそ望ましい治療結果が出せるのではないかと考えています。
レーザー1つにしても、パワーやパルス幅等の設定や照射方法で結果が変わります。
ボトックスは濃度と量、注入部位を調節して、必ず効果を確認し、お一人お一人にベストな結果を出せるよう最善を尽くします。
ヒアルロン酸に関しては、お見立てと、注入部位の決定、使用するヒアルロン酸製剤の選択、注入量など医師によって全く異なる結果になると思います。
私たち美容医療の医師は、何十年も同じことを続け、自分の行った治療を反省し改善するよう努力しています。
結果に喜んでいただけなかった時は、その理由を徹底的に掘り下げ、満足いただけるまで再チャレンジさせていただくこともあれば、やらないという選択をすることもあります。
自分の技術や経験に限界を感じるときは、先輩や友人の医師に相談してアドバイスを仰いだり、ご紹介させていただくこともあります。
時には健康相談を受け、他科のドクターを紹介することもあります。
患者様からは治療結果に対して感謝のお言葉を頂くことが、何よりも励みになり、モチベーションが上がります。
このような信頼関係が心の豊かさを育み、幸福感を増幅させていると感じています。
美容医療は手段であり、人生の目的ではありません。
何かをなし得るための手段に過ぎません。
本当に大切なことに集中していただくためのお仕度として、皆さまの素肌を日常的に整えておくことが私の“美容医療”です。

